晩秋の風物詩 「佐久小鮒の甘露煮」
佐久鯉・小鮒の甘露煮
郷土食を食べよう ・・・(2)小鮒の甘露煮
信濃毎日新聞「週刊さくだいら」
特集(2006.12.21号)掲載
食生活を見直すPart2
「小鮒の甘露煮」で旬を保存
秋、田の水を払う季節になると佐久地域では活きたままの小鮒が販売
される。秋の風物詩として欠かせない存在。郷土食として今も変わらず
残る、昔ながらのふるさとの味。
どの家庭もわが家で受け継がれた味と調理法を守り、旬の味覚を楽しむ。
稲田養鯉の時代には、種鯉だけを飼う
専用池がなく一般の養殖池で産卵する
と、 フナ、ドジョウが混ざり、田から水を
払う時に、当歳(鯉)、小鮒、ドジョウが
篭で一緒になった。
全部を甘露煮にして押しずしにしたもの
が雑子(ざっこ)ずしで、今は懐かしい幻
の郷土食になっている。
現在は、水田に小鮒だけを放し、環境に
やさしい米づくりの実証もある。
小鮒がいる水田は、水温が上がるため
米の生育がよく、除草効果によって無農薬栽培の「フナ米」として付加価値
が高まる。
また、3~4カ月の生育で販売できる小鮒は、販売に三年を要す鯉とは効率
のよさでの相違点がある。
佐久市跡部で臼田養魚店を営む臼田歓一、道子夫妻の秋から冬は
「小鮒の甘露煮」加工の最盛期。郷土食の伝承を大切に考える地元の
スーパーマーケットで、20年近く旬の味覚の限定販売を続けている。
添加物を一切加えないこだわりの味からは、わが家でつくる、できたての
感覚が伝わってくる。
おかず、押しずし、お茶うけ、お弁当、酒のさかなに、来年もまた食べたい
味だ。
臼田氏は、アユやニジマスなどの養魚の変遷を知る代表的生産者であり、
先代が中国へ鯉の養殖に行った人々の一人でもある。
昭和15年に父、良一氏らが中国産草魚
を日本に最初に持ち帰り育てた。
当時の長野県では、生育が早く雑草も
食べる草魚をたんぱく源の確保のために
移入し、佐久鯉の養鯉技術で育てること
を考えていた。
試行錯誤の養魚の歴史がうかがえる。
臼田良一氏の亡くなった翌年、草魚も死
んだため、今ははく製として残し、臼田家
の歴史を記す家宝となっている。
臼田氏宅で37年生き続けた草魚は、
体長105cm、体重14.4㎏までに
成長した。 写真は昭和28年頃
昔ながらの「押しずし」
型に小鮒の甘露煮を並べて入れ、酢の味
を控えめにしたすし飯を詰めて押す。
現代風に「手まりずし」
小さめの湯飲み茶碗等にラップを置き、
下に小鮒の甘露煮、食用菊の甘酢漬け、
赤カブ漬けを入れて、すし飯をのせ、ラップ
で丸く握る。
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