ゴーヤ
「信州の夏の野菜 栽培農家を訪ねて」
信濃毎日新聞社「週刊さくだいら」
特集 <2004.8/12号掲載>
夏の信州は野菜王国。新鮮でおいしい旬の野菜が簡単に手に入る恵まれた環境だ。
冷涼な気候が育てる野菜は高品質で健康的。命を育む生産の現場を知ることで、農業のあるべき豊かさと大切さに触れようと、ゴーヤーとチンゲンサイの生産者を訪ねてみた。
ゴーヤー
ニンニクやウナギと並ぶ夏のスタミナ源に仲間入りしたゴーヤーは、この夏も人気沸騰。長寿の地、沖縄を代表する夏のヘルシー野菜だ。
沖縄との友好が栽培のはじまり
ゴーヤーはここ数年、沖縄、・鹿児島両県以外の各地でも栽培者が増えている。しかし、御代田町の伍賀では、驚くことに平成9年(1997年)から栽培を始めていたという。
JA佐久浅間伍賀支所は、当時、沖縄の農協と姉妹提携し、沖縄でのレタス栽培を指導していた。
研修者を受け入れる中で、夏に空くハウスの有効利用としてゴーヤーの施設栽培が始まった。
今でこそ栽培法も指導できるようになったが、栽培当初はまるで手探り状態。「まずはやってみよう」の出発だった。
ゴーヤーはニガウリ、蔓(つる)レイシとも呼ばれる。
「ゴーヤーと呼ぶのは沖縄だけ」と原産地の誇りをもつ沖縄。
御代田町では、沖縄との友好が続き、毎年直送された苗が生産者の元に届く。生粋の沖縄生まれのゴーヤーが信州の大地で育っている。
初年度から栽培を続けているのは柳沢初夫さん(67歳)。
県内でゴーヤーを出荷する栽培者としてはおそらく最古参だろう。
柳沢さんのビニールハウスには2列に植えられたゴーヤーが並ぶ。
つるによる生育が旺盛で、害虫にも強いので栽培にあまり手は掛からないようだ。
風通しをよくして、まんべんなく日差しが当たるように、余分な葉とつるを取り除くのが栽培のポイント。
日差しが強く、緑が濃いと苦味も増すらしい。沖縄と同じ苗でも育つ地で苦味が違うという。
収穫したゴーヤーは流通の時いぼが痛まないように、発泡スチロールの網目のノバキャップを一本一本にかぶせ、採りたての品質を守っている。
相場に左右される野菜の販売。ブームに乗って生産過剰にならないように、家庭でのゴーヤー料理の普及による、消費の安定が期待されている。
柳沢初夫さんと喜乃江さんご夫婦。
農業経営の安定化のために
御代田町小沼にも3、4年前からゴーヤー栽培が広がった。ここは、浅間山ろくに広がる高原野菜の大産地。
竹内英輝さん(41歳)は、レタス、キャベツ、ブロッコリーなどの栽培の合間に、ガラスハウスでゴーヤーの作業をする。
夏は猫の手も借りたいほどの忙しさだが、やはり、夏のガラスハウスは有効に利用したいという。
今年、7月にひょう害に遭ったように、農業は絶えず天候や相場による収入の不安定と背中合わせ。
作付けをずらして育て、どの時期にも収穫期をおくことで、収入と労力の安定化を図っている。
農業には経営感覚、栽培技術、強じんな体力などすべてが求められ、最近は農薬や食品の知識まで必要とされる。
竹内さんの年代は、高齢化の中で若手の生産者を率いて次の農業を担う世代。
気負い無く農業を語る目に、継続してきた力と誰もがオンリーワンである農業の姿を垣間見た。
レタスやキャベツの収穫を早朝終わらせてからゴーヤーの収穫にはいる竹内さん。
ゴーヤーの強力パワーで夏バテ解消
ゴーヤーが健康食、長寿食といわれるゆえん。それは、豊富なビタミンCや葉酸などの働きと、脂溶性物質「チャランチン」の血糖上昇を妨げる働きが大きいといわれる。また、種ごとお茶などで飲むと、ガン細胞と闘う物質が活性化するともいわれている。
新しい味覚――――「苦味」
ゴーヤーの苦味は、ウリ科特有の「モモルデシン」によるもので、食欲増進効果をもつ。味覚には、甘味・塩味・苦味・酸味・旨味があり、最近人気の辛味は味覚ではなく、痛覚を刺激するもの。
日本の苦味はほろ苦い山菜や、ビール、コーヒーなどだが、ゴーヤーの原産地東南アジアは苦味を味わう先進国。
舌の奥の“心地よい苦味”を感じる部分でゴーヤーのおいしさに開化してみよう。
はなのさんおすすめのお茶うけ
今年米寿を迎えた柳沢さんの母、はなのさんが夏になると毎年作るゴーヤーのピール。苦味が苦手な方でも、ほろ苦さで味わえる逸品。
たっぷり作って密閉保管し、冬はお湯を注いだ健康飲料でも楽しめる。作り方は、縦半割りで細切りにしたゴーヤーに砂糖をまぶして2.3時間置き、火を強火から中火、弱火に変えながら煮る。バットなどにグラニュー糖を敷き、ゴーヤーがくっつかないように一本ずつ転がしてまぶす。
【ゴーヤーサワー】 ゴーヤーをすりおろし、ハチミツ、レモン、焼酎、炭酸水を加える。
【イカロールフライ】 ゴーヤーを輪切りにして中をくり抜き、細かく切ったロールイカをフードプロセッサーで練り、おろしショウガ、味噌、みりんを加えたものを詰めて、フライまむたはてんぷらにする。
【ゴーヤピール】 作り方は上記
「ゴーヤーとワカメの元気盛り」 (写真右下)
ゴーヤーを縦半割りにして種とワタを除き、細切りにして強めの塩でもむ。水洗い後水気を取り、片栗粉をまぶしてから揚げにする。(つまみにもなる)
戻したワカメ、細切りのパプリカ(赤)、春雨をいためてしょうゆで味付けし、ゴーヤーと盛り合わせる。塩と油、熱は苦味を取り除く。塩漬け時間と塩抜きで辛さを加減。
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