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厳冬の味…「浅科矢島凍み豆腐」

F <週刊さくだいら特集 2004. 2.12掲載>

風土が育てた天然凍結の滋味…

大豆の栄養が見直され、大豆と大豆加工品の消費拡大が推奨されています。納豆・豆腐・醤油・みそに加工される大豆。豆腐はさらに、油揚げ・厚揚げ・凍み豆腐、おから、ゆば…と、実に多彩な味わいを食卓に届けています。  そこで、最盛期で活気みなぎる全国有数の「天然凍みの豆腐」製造スポット、浅科村矢島、鶴沼地区を訪ねてみました。 

400余年受け継がれた
「矢島凍み豆腐」の歴史

武田信玄が兵を率いてこの地にきた戦国時代、兵糧のための大豆や大豆製品を作っていた際、寒の中で偶然に生まれたという凍み豆腐。言い伝えは様々だが、一帯が西北に季節風を遮る山を背負い、豊かな湧き水に恵まれたことが製造適地としての原点だ。高野山で「生氷(なまごおり)」、江戸で「一夜じまし」と呼ばれる一夜凍みの豆腐。精進料理の素材として欠かせないものだが、天然凍結の産地は数少ない。それは、環境が限定される上、厳しい冬の作業であることが少量生産を物語っている。

子から孫へと伝えたい、地元の特産品
「工夫は何ですか」「どんな気持ちでつくっていますか」「仕事がいやだと思ったことはありませんか」などと、子供たちの質問が続く。大寒の翌朝、矢島凍み豆腐組合の組合長、岩下千弘さん(75歳)の作業所での、浅科小学校の3年生の社会見学のひとこま。「弟子はいますか」…居合わせた大人は思わず苦笑が。後継者の問題に悩む実状の中での鋭い質問だ。

小学生に「ささら」(混ぜるための竹の道具)の説明をする岩下さん
A 現在、矢島凍み豆腐の生産者は14戸。昭和35年から40年頃までは、60戸もあり、あみ手や売り手を含めると120戸の村落全員が凍み豆腐に関わっていたという。子供の頃から凍み豆腐を食べるのも手伝うのも当たり前の環境だった。そのため、現在は生産者でなくても、豆腐作りを手伝える人は数多くいるという。
57歳が一番若く、70歳代が中心の生産者たちは、地域と季節限定の生産技術を誰に受け継ぐのだろうか。地元の特産品づくりを引き継ぐ環境にある子供たちに、「家で凍み豆腐の料理を食べる?」と聞くと約半数が手を挙げた。帰り際に「今日の給食は凍み豆腐がでるよ」と先生の声がかかった。これからの“食育”が目指す理想が、現実の後継者不足解決へと結びつくことが望まれている。
 
[凍み豆腐づくり]

①大豆を戻し、グラインダーでひく。(呉) 写真…水と一緒に大豆に熱をかけないようにひく。昔は石臼を使った。

②呉に消泡剤を入れて釜で炊く  

③しぼって、豆乳とおからに分ける 写真…力をかけて豆乳を絞る。昔は最も体力を必要とした作業だ。

④豆乳ににがりを合わせ、ザルを入れて水を捨てる。(豆腐の善し悪しを決める最も重要なポイント)  写真…にがりの湯の色で出来栄えがわかる(うすささ色が理想)

⑤水切り箱におぼろ豆腐を流し、固める   

⑥豆腐を切る

⑦夜から朝方まですのこに並べて屋外で凍らす(一夜凍み)。晴天、無風が理想。

⑧朝方、豆腐を三本のワラで編む

⑨屋外に吊るして乾す

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こだわりが価値を高める…伝統を守る職人技

大豆をひくグラインダーにもこだわりをもつ小泉さん  
Photo_2 社会見学の中で熱心にメモをとっていた小泉すなおさんの祖父母、小泉信一さん(68歳)と征子さんご夫婦が矢島地区の凍み豆腐生産者と聞き、興味深く訪ねてみた。             作業所に入り、まず大豆が違うことに気づく。輸入品よりはるかに大粒。国産大豆100%の凍み腐は注文に合わせた限定生産だ。国産大豆は生産量が少なく、品質の違うものが集まるため、豆腐作りの技術を必要とする。「晴天でも月が明るくない星空がいい」「凍み方は木凍み(もくじみ)がいい…木目のように凍みる」と、製造のコツが続く。凍み豆腐づくりの長老が亡くなる前の三年間、みっちりと技術を伝授されたという。便利な機械によって省力化と商品の安定化は図れても、省いてはいけない技術とこだわり。それは、商品そのものの価値となっている。

地元の食文化が支える伝統の味

朝5時。矢島地区にカチンカチンに凍った豆腐を集める音が響く。豆腐同士がぶつかると、まるで金属のような小気味よい音だ。小泉さんの家を再び訪ねると、素手で冷たい凍み豆腐を7個一連にして編む作業が進んでいる。近所から通うあみ手は、朝4時から9時まで凍み豆腐を編み続けるという。7時、明るくなった外の温度計は、氷点下12度。朝の重要な作業が終わると、次は電話と来客で活気づく。先日買いに来た人がまた来た。需要は地元がほとんどだとの話に驚かされる。
凍み豆腐を編むワラは、はぜかけの下の段になる色白のものを選ぶ。国産大豆は高くても、確かに甘くてなめらかだ。農閑期の仕事として成り立っている凍み豆腐の生産。厳冬期の仕事のようでも、それを支えているのは、年間サイクルで営まれる農業の一環だと改めて気づく。原料のこだわりは農と食を結ぶ。
大豆の生産などの地域ぐるみの取り組みが明日の凍み豆腐製造への鍵になるだろう。

Photo_3 現在、凍み豆腐は「冷凍の袋詰め」と「冷凍の連あみ」、「連あみの自然乾燥」で販売されている。シーズン前半は生産が間に合わず、一夜凍みが多い。「矢島天然凍み豆腐(冷凍)」の販売店は、道の駅ほっとパーク浅科と、地元のスーパーマーケットツルヤ。いずれも数量限定で販売中。                                                              

※戻した時、絞らずに使うのが天然もののポイント                                             

信州の風土に育つ伝統食品

長野県の凍み豆腐生産量は全国シェアの90%以上。ほとんどが大手メーカーによる工業生産のものだ。天然凍結のものは、工業製品のように膨軟剤(重曹)でやわらかくする加工はせず、自然のままの風味と歯ごたえがある。
ハイテク技術による年間消費の“凍り豆腐”を日常の食生活でメニューに定着させることにより、天然凍結の“凍み豆腐”は、旬の限定品として希少価値が高まる。食べることで共存するこの関係といえそう。凍み豆腐を好んで食べてきた食習慣を信州の伝統食として守っていきたい。
 Photo_4                                 
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電子顕微鏡の組織比較(30倍)
凍り豆腐         天然凍み豆腐

<写真> 長野県食品工業試験場提供                                        

                      

毎日食べたい健康食品         

にがりの効果
海水中のミネラルをバランスよく含むため、にがり健康法が注目されている。ダイエット、美肌づくりに人気で、マグネシウムを多く含むことからストレス、無気力、現代病の解消に役立つといわれている。

大豆イソフラボン
体内で女性ホルモンと同じような働きをするため、骨粗しょう症や更年期障害に効果大。

大豆サポニン
抗酸化作用が高脂血症、高血圧、動脈硬化を予防。肝機能改善、ガン予防に。

毎日の食生活は子や孫に引き継がれる。みそ汁だけでもいい。家で食べる凍み豆腐メニューを意識して増やそう。J

麻婆春雨 
凍み豆腐と春雨を戻して食べやすく切り、パプリカ(赤)を薄切りにする。ひき肉とパプリカをいためて、トウバンジャン、酒、スープ、しょうゆ、砂糖を加える。春雨・凍み豆腐・長ネギを入れ、片栗粉でとろみをつける。

フライ 
薄味をつけた熱いだし汁で凍み豆腐を戻す。凍み豆腐にマヨネーズを塗り、チーズ、ハムで挟んでフライの衣をつけて揚げる。

キムチスープ 
ガラスープに刻んだハクサイキムチを入れ、食べやすく切ったワカメと、戻して切った凍み豆腐を入れて塩こしょうで味を調える。

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