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「摘み草の里」売木村

                                                      信濃毎日新聞社「週刊いいだ」特集
                          <2008.7/10号掲載>

梅雨入り前のある日、東信に住む私は南信州「売木村」に向かって車を走らせていました。昨年末、東信で摘み草料理の講習会を開いてくださった二人の女性を訪ね、その活動を見せていただく目的でした。
摘み草の里「売木村」…信州に住みながら、名前も位置も知らなかった村です。南信の皆さんは訪ねたことがありますか。初めて行く信州の南端、売木村をウォッチングしました。A

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摘み草弁当に心を込めて
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こまどりの湯の上にある施設の厨房を訪ねると 奥田一子さんと伊東悦子さんがお弁当づくりを始めるところでした。高齢者の会で食べていただく摘み草料理。この日はお弁当です。
食材を揃え次々に作るチームワークは手際の良いもの。伊東さんは材料を切りながら、その大きさをしきりに相談しています。高齢者の食べやすさへの配慮です。
山菜ご飯を盛る前に「朴(ホオ)の葉でもとってくればよかったね」「あるある外に」の会話で、ホオの葉が摘み取られ、ご飯の下に敷かれました。

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お弁当は、彩リ豊かに仕上がりました。その一部始終は、女性の細やかな愛情とおもてなしの心をそのままに感じさせるものでした。楽しみながら四季の自然と心を盛り込む…おぼろげだった摘み草料理の真髄をこの時はっきりとつかみ取りました。

てんぷら(山ウド、紅ドウダンの花、サツマイモ)、ネギの花入り卵焼き、ジャガイモ素揚げ、藤の花入り酢の物、含め煮、キャラブキ、山菜ご飯




野山の自然を盛り込む「摘み草料理」で村を知る… 

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(左)山ウドの葉はてんぷらに。初秋に咲く花も揚げられます。(右)紅ドウダンの花はてんぷらの彩りに。(5~6月初)

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()ネギの花(ネギぼうし)をバラバラにして、卵焼き、じゃこやおかかのしょうゆあえ、みそ汁の具に。(右)殺菌効果のある朴(ホウ)の葉






七月の献立
 

 
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サツキの花、ヨモギ、柿の葉、イタドリの天ぷらなど







女性パワーで村おこし

「摘み草の里」親善大使

奥田さんと伊東さんが活動する「NPO法人つみくさの里」は、摘み草料理を学ぶ女性グループと村の支援が一体となり、摘み草で村おこしをしようと始まった組織です。
お二人は、昨年末、東信の大学で開かれたる食農教育講座で「野山のごちそう、足元の草で地域おこし」と題した講演をしてくださいました。遠く冬の道を出向いて、「摘み草の里」の紹介と摘み草料理の講義をする姿は、村に住み、食を支える女性の熱意を伝えるものでした。
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地域を変えるのは女性のネットワークだといわれます。子育てから離れ、生きがいを求める世代になった女性たち。「いろいろなイベントへの参加で少しずつ自信がついてきた」と二人は話します。「全国山野草・つみくさ料理サミット」での活躍からもその姿が伺えます。
他地域への広報活動と地元での実践活動を担う女性たちは時代を変える力です。
「同じ一生なら人に喜ばれることをしたい」。二人のの横顔が輝いていました





村に住む高齢者の幸せ

摘み草料理で親睦会

その日、売木村文化交流センターでは、デイサービスセンターゆうらく荘の「いきがいゆうゆうクラブ」がありました。集まった高齢者の方々のほとんどが一人住まいや老夫婦だけの暮らしです。
輪になって話をし、昼には摘み草料理を食べて普段出来ない交流を深めました。最高齢は98歳のおばあちゃん。「私は草取りが仕事」と口々に話します。午後は、輪投げのゲームで体を動かし、みんなで大笑い。
「私は今、幸せだよ。」というおばあちゃんたちの印象的な言葉に、高齢者を大切にしている村の様子を垣間見ました。楽しい時間があれば、人は幸せをみつけられるのかも知れません。Img_5602 Photo

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思い出に残る体験学習を

摘み草体験●修学旅行

奥田さんが経営する「つみくさ料理ジュイールどうろく」で、関西からの修学旅行の体験学習を受け入れると聞き、一緒に迎えに行きました。受け入れ式での松村増登村長のお話と中学生との対面は、とても新鮮な時間でした。
下伊那地域での体験学習は、(株)南信州観光公社を介し、農家民泊として企画されています。飯田市から愛知県を経由して浜松市に通じる三遠南信自動車道は、県内そして、関西・中京地域との交流をさらに密にするものになります。
「どうろく」の庭で無邪気に犬と遊ぶ中学生を見ていると、自然の中での心の開放感が伝わってきます。彼らは、見たことのない山菜や花や木の葉を手にして摘み取り、夕食でそれらを味わいます。
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次世代に繋がる若者を目の前にすると、この地を第二のふるさとのようにして環境を守る人のひとりになってほしい…と願う気持ちになります。






今、売木村は―――
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信州の南端、県庁に最も遠い下伊那地域で小さな村々が自立の道を守っています。自然再生の時代。豊かな自然資源を活用し、次世代に続く環境づくりのための新たな取り組みが望まれています。個性ある村に目を向ける時がきているはずです。
売木村もその村のひとつ。三遠南信自動車道からも外れ、山々に囲まれた秘境で自然を守れる環境の中にあります。静けさの中に時折聞こえる風の音、鳥の声、虫の音…。肌がこの空気に触れたとき、都会の喧騒(けんそう)の中で暮らす人々は、心の奥深くにわき上がる癒しを感じるでしょう。
準限界集落であるものの、さまざまな公共施設が整い、昔ながらの地元の店は住む人の生活に合わせて朝から晩まで開店しています。村の存続にとって一番大事な「住む人が元気に暮らし、幸せを感じているか」は、前向きなヒューマンパワーが答えてくれそうです。

高齢化と限界集落
農山村の過疎化が進み、高齢化と共に集落の存続が危ぶまれています。65歳以上が人口の50%以上を占める集落を「限界集落」、55歳以上が50%以上を占める集落を「準限界集落」と名づけて数値的な把握をしています。あえて“限界”と使ったのは、早い時期に気づき危機感を持って、その歯止めとしての手を打つためで、集落の消滅を予防するためのライフミニマム(生活するための最低条件)を行政に求めています。
長野県では今年「ふるさと納税制度」が制定されました。“ふるさと信州寄付金”として守りたい地域への寄付をすると、個人住民税などが軽減される制度です。農山村の原風景を守るためにも、応援したい村、思い入れのある地域に直接役立つ支援として拡大したい制度です。詳しくは県のホームページで。(http://www.pref.nagano.jp)

標高823m 人口667人 世帯数288世帯

  

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